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お悩み1:同じコミュニティーでの恋愛に躊躇(ちゅうちょ)してしまいます​ ▼ お悩み2:自分の生活に精いっぱいで、他人に感情を割けません ▼ 【回答者】ドラァグクイーン/ドリアン・ロロブリジーダ たった一度だけの大切な人生。恋愛は何をもたらすか? お悩み3:好きではないのにお付き合いをするのは、NGですか?​ ▼ お悩み4:ときめかなかったら、恋愛ではありませんか?​ ▼ たった一度だけの大切な人生。恋愛は何をもたらすか? お悩み3:好きではないのにお付き合いをするのは、NGですか?​ ▼ お悩み4:ときめかなかったら、恋愛ではありませんか?​ ▼ 【回答者】家族社会学者/永田 夏来 複雑な現代社会は、恋愛とどう関係し合っているのか? お悩み5:相手と価値観や習慣が一致しない場合、どうすればいいですか? ▼ お悩み6:「推し」にしかときめきません。このままでよいのでしょうか?​ ▼ 複雑な現代社会は、恋愛とどう関係し合っているのか? お悩み5:相手と価値観や習慣が一致しない場合、どうすればいいですか? ▼ お悩み6:「推し」にしかときめきません。このままでよいのでしょうか?​ ▼ 【回答者】教育・総合科学学術院教授/石原 千秋 文学や歴史の視点から、私たちの恋愛を考えてみよう お悩み7:付き合う前から、別れる可能性を考えてしまいます​ ▼ お悩み8:片思いの状態で、話すきっかけをつくれません ▼ 文学や歴史の視点から、私たちの恋愛を考えてみよう お悩み7:付き合う前から、別れる可能性を考えてしまいます​ ▼ お悩み8:片思いの状態で、話すきっかけをつくれません ▼ 文筆業・恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表 清田 隆之(きよた・たかゆき) 1980年東京都生まれ。2005年早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中、恋バナ収集ユニット「桃山商事」を立ち上げ、これまで1,200人以上の悩み相談に耳を傾ける。桃山商事としての著書に『生き抜くための恋愛相談』『モテとか愛され以外の恋愛のすべて』(ともにイースト・プレス)など。 男子校出身で、恋愛経験がゼロというわけではありませんが、同じコミュニティー内での恋愛はほとんど経験がないです。私は恋愛が人生の刺激になり得ると考えており、人生にとって必須ではないにせよ、重要な要素にはなると思っています。しかし大学生になり、周りと深く関わらなくても特に困ることなく過ごしているうちに、どのように相手とコミュニケーションを取れば恋愛的な雰囲気になるのかが、最近分からなくなってしまいました。 相手とのコミュニケーションに苦戦してしまう。私も男子校だったので分かる気がします。マッチングアプリや合コンなどと異なり、大学のコミュニティーは恋愛を目的とした出会いの場ではありません。そこで恋愛に発展するには、自然の成り行きに委ねることも必要ですが、事はそう簡単ではないですよね。 最近、大学生からよく耳にするのが、コミュニティー内で問題を起こしてしまった際のリスクです。「自分の発言や振る舞いが、相手にとって加害的に捉えられてしまったらどうするか」「SNSで素早くうわさが回るので、どこで何を言われるかを考えると怖い」…。失言やハラスメントが社会的問題にも発展する世の中で、食事やデートに誘うのをためらってしまうのも、無理はありません。 ポイントになるのが、相談者さんの言う「恋愛的な雰囲気」を醸し出すべきかどうかです。二人きりの関係に持ち込む、性愛的な会話をする、相手の恋愛観を聞くなど、恋愛に結び付きそうなコミュニケーションが不可欠かというと、必ずしもそうではないはず。例えば共同作業をする中で「この人、いいな」と感じることがあると思います。むしろ安心感や安らぎ、リスク管理など、人間的な信頼の基盤を共有する。その上で最後に恋愛に進むという流れの方が、あなたにはマッチするのかもしれません。 一昔前であれば、サークルの用事を装って、二人きりで食事をするようなアクションもハウツーとして共有されていました。しかし今はそれがルール違反にもなりかねない。「一緒にご飯に行きたい」と、相手に興味を抱いていることを実直に伝え、段階を踏みながら関係を育むのはどうでしょう。相手が困りそうなことをしっかりと想像した上で、むやみやたらに気持ちを踏みにじることはしないというスタンスそのものを知ってもらえれば、向こうも嫌な気持ちはしないはずです。 恋愛はしたくないです。自分の生活を送るのに精いっぱいで、他の人に感情を割くと私の心の安定が壊れてしまいかねない。恋愛が重要なのではなく、恋愛をしたいと思える相手がいたときに、その人と交際するまで、あるいは、した後で何を得られるかが重要なように思います。周りに感情の浮き沈みが激しい人、すぐに恋人に泣きついたり、メンタルが不安定なときに八つ当たりをしたりする人を多く見かけて、恋愛をするのが面倒くさく感じてしまいます。 現代の大学生は本当に忙しそうに映ります。社会からたくさんの課題を詰め込まれ、「生産性を上げろ」「時間を有効活用しろ」「将来に備え、今からすべきことをやれ」と、圧力も掛けられている。処理すべきタスクが膨大で、心身のコンディションを保たなければとても対処できない。相談者さんの「生活をするのに精いっぱい」は、そうした状態だと察しますが、そういう中で恋愛が面倒なものに感じても無理はありません。個人ではなく社会的構造が作り出している問題なので、自分を変だと考える必要はありません。 コスパやタイパ、リターンの観点では、大学の勉強やインターンより恋愛が劣るのは事実です。劣るどころか、予定も目標もToDoリストも、めちゃくちゃになります(笑)。 他方、恋愛がすてきとされるのは、その時々の感情に対し全力で向き合うからでもあります。時と場合にもよりますが、泣きついたり八つ当たりをしたりするのは、それだけ相手に期待しているから。感情をぶつけても相手が壊れないと思っているからです。例えば子どもも、親に対して「暴れても大丈夫」と思えるから暴れるわけで、本当につながりが希薄な環境では、過剰に良い子に育ってしまうというケースもあります。激しく感情が浮き沈みするダイナミズムには、人生を豊かなものにしてくれるという側面もある。私もうらやましさを感じるのですが、もしかすると人間には「かき乱されたい」という欲求があるのかもしれません。 長い目で見ても、恋愛のダイナミズムは人生を彩ってくれるはずです。逆に生産性だけを追い求める毎日は、その時々は充実するものの、記憶の1ページとして残っていくのか疑問ですよね。例えば5年先、「この居酒屋で恋人とけんかしたな」という思い出はあっても、「あの日はToDoリストを10個こなしたな」と振り返ることはないと思うんですよね(笑)。恋愛を面倒に感じてしまうことに問題はないのですが、懸念すべきは退屈する可能性です。時には少しだけ、自分を揺さぶってみることも有意義かもしれません。その入り口の一つに、恋愛という選択肢もあると思います。 ドラァグクイーン ドリアン・ロロブリジーダ 1984年東京都生まれ。2008年早稲田大学法学部中退。2006年開催の「若手女装グランプリ」で初出場にして優勝し、ドラァグクイーンとしてデビュー。その後、数々のイベントやアーティストのコンサート、PV、ファッションショー、CM、舞台・映画などに出演。YouTube「JUDGE ME」では若者に対する相談に応じる活動を行っている。 他人と一緒に過ごす時間が増えると人生が豊かになるため、恋愛は重要だと思います。恋人がいると、会う楽しみや旅行に出掛ける楽しみが増えるのではないでしょうか。現在、マッチングアプリで出会った彼氏がいます。ただ、今のところは好きではありません。会って3回目で告白され、「嫌いじゃないし、そのうち好きになれるかも」とOKしました。こういう付き合い方ってよくないですか? ちゃんと好きになってから付き合ったほうがいいですか? 「そのうち好きになれるかも」でお付き合いを始めるのは、全然OKだと思います。むしろお互いの気持ちが“50:50”で対等なんて、極めて少数派のケース。恋愛なんて、どちらか片方の想いの方が重い・軽いのが一般的なんではないでしょうか。 たしかに、「恋人同士は愛し合い、仲むつまじくすることが是」といった“恋愛至上主義”は、宗教のように世界を覆っています。でも実際には、全くうそ偽りのない誠実な恋愛なんて、そもそも存在しないと思います。お付き合いというものは、みんな少しばかりの真心に、打算や計算を重ねて人間関係を紡いでいるのです。今好きかどうかは、気にする必要がないんですね。強いていうなら、自分の中にタイムリミットを設けて、タイミングが来ても気持ちが動いていなかったら、慈しみと思いやりを持ってお別れするのはいかがでしょうか。それこそが誠実というものだと思います。 私が気になったのは、前半部分です。「会ったり旅行に行ったりする楽しみが増えるから、恋愛はすてき」なのかしら…? 今はまだ、恋人がいること自体が楽しい時期かもしれません。でもあなたは、これから長い人生の中で、相手に対して心から恋焦がれ、愛して、愛されるというフェーズに進む日が来るかもしれません。そこで初めて、恋愛の本質のようなものを感じられるでしょう。 だからこそ、若い時期はクソみたいな恋愛をたくさんたくさんしておきなさい(笑)。不誠実なことをされたから、人のことを大切にする。大切にされるありがたみも感じる。最低なセックスを経たからこそ、至高のセックスができるようになるはずです。ただしお互いの同意と、妊娠や性病を望まないなら避妊は忘れずにね。 私自身、今までろくでもない恋愛、それにすら至らない経験があったから、今を幸せに生きることができています。周りのことは気にしないで、自由に恋愛を謳歌してください。 恋愛をしたいか、したくないかでいうと、正直どちらでもいいです。タイミングやご縁があれば勝手にするもの。楽しみ程度にあるのが丁度いいのではないでしょうか。依存しすぎると、自分を犠牲にして消耗してしまうからです。私は今まで恋愛感情を抱いたことがありません。現在4年間お付き合いしている方がいますが、俗に言う「ときめく」というような感情は抱かないです。このままで良いのかと考えてしまいます。 まず恋愛感情の有無について。世の中には、相手に性的欲求を抱かない「アセクシャル」、恋愛感情を抱かない「アロマンティック」の方がたくさんいます。ときめかないにもかかわらず、4年間もお付き合いしているのなら、良好な関係だと思うんです。もし現在、依存し過ぎずにいられるなら、それはとてもしっかりとした恋愛ではないでしょうか。 では、良い悪いは別として、“ときめく”って何でしょうね。これは言葉では言い表せません。あえて言えば、心が高鳴る“トゥクトゥーン”です(笑)。世の中には“ときめき至上主義”のような考えもまん延していて、「ときめかなくなったら恋愛はおしまい」という風潮があります。そんな考えは、ときめいていた頃への懐古主義に過ぎないと思います。経験を積むと、ときめきよりもプレミアムなものが増えていくし、安らかさがもたらす充足感も増していくはずです。 相談者の方の「タイミングやご縁があれば勝手にするもの」という価値観にも大賛成です。一方で個人的には、「自分を犠牲にして消耗してしまったりする」からこそ、恋愛は楽しいものだとも思っています。 他の方の相談内容を見ていても、皆さん人生やキャリアの設計がしっかりとし過ぎていて、どこか衝突や消耗を避けたがる傾向を感じます。でもね、人生設計はほとんどうまく運びません。私なんて早稲田大学の入学式の日、将来ドラァグクイーンを生業にするとは1ミリも考えていませんでした(笑)。 人生というのは、「計画をどう立てるか」よりも「計画が崩れたときに、どう振る舞えるか」が重要なんではないでしょうか。その柔軟性、“使える筋肉”こそが、恋愛でも世渡りでも大切です。早稲田の皆さんは地頭がいいのだから、その辺りも磨いてほしいですね。出世してエリートになってたくさんの部下を従えるとしても、若いうちにおかしな人と出会って、自分とは違う価値観の人と恋愛して、たまには変な街で遊んで知見を広げることで、人心掌握のための帝王学が身に付くという考え方もできます。 まあ、われわれのような上の世代が恋愛相談に乗ったところで、若い人たちには結局響きませんよね。とにかく、今のうちに恋愛を楽しんで。転んだらまた起き上がればいいのです。今日のところは、この辺で。ごきげんよう。 家族社会学者 永田 夏来(ながた・なつき) 1973年長崎県生まれ。2004年早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。2020年より、兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。家族社会学の観点から、結婚・妊娠・出産と家族形成について調査研究を行っている。メディアでは恋愛についても言及。著書に『生涯未婚時代』(イースト・プレス)など。現在高橋幸との共編著『恋愛社会学(仮)』(ナカニシヤ出版)を準備中。 友達や家族とはまた違う絆を深めることができ、人生をさらに豊かにしてくれるため、恋愛はそこそこ必要ではないかと思います。例えば、家族以外から大事にしてもらえる、二人で物事を考えるといった、貴重な経験をすることができるからです。しかし、考え方や価値観、習慣は必ずしも相手と一致するわけではありません。どのように互いの相違点を埋め合わせていくか、よく悩みます。 価値観や習慣は、一致しなくてもよいと思います。おそらく相談者の方は、「プライベートな関係を共有できる人は限られている」という前提に立っているのでしょう。しかし「友達や家族とはまた違う絆」は、恋人以外にも存在するはず。暮らしを共有するのはシェアハウスのルームメイトでも可能ですし、先輩や上司からしか学べない人生観もあります。それら全ての要素を恋人に求めてしまうと、その分「相違点」も増えるため、行き詰まってしまうのです。大切な物事を細分化しながら、恋愛に求める要素を限定していく。そんな視点も必要ではないでしょうか。 ただし、それは簡単なことではありません。皆さんが生きているのは「個人化」の時代だからです。日本社会では30年ほど前まで、大きな価値観を共有していた時代がありました。終身雇用や年功序列といった企業のシステムが土台となり、大学を経て就職し、30歳を目処に結婚し、子を育てて家を買い、老後は年金で暮らす。そうしたライフコースに沿って、多くの人が暮らしていたのです。 そうしたシステムが解体されてきたのが現代です。社会学では「規範」といいますが、人の生き方を統制する“常識”が失われつつあり、「何に従えばいいか」を自分自身が決めなければなりません。特にプライベートな領域は他の人の話を聞く機会が少ないため、判断基準がますます難しくなっています。 さらにそこへ、SNSから「何でも互いの価値観を認め合い、いつも笑顔で楽しく暮らし、しかも外見的にも魅力的なカップル」のような、半ばフィクショナルで刺激的な情報が入ってくる。すると誰だって、あらゆる要素を恋人に求めてしまいますよね。 大変な時代ですが、規範が弱くなり選択肢が増えたこと自体は、ポジティブに捉えましょう。かつては「恋愛しなければ半人前」「性体験が豊富であることが立派」といった規範もありましたし、性別により社会的行動が制限されることも多かったです。今は、本当に重視する価値観を自分で決められます。制約に縛られず、本来の自分に立ち返って、じっくりと重視する価値観を考えてみてください。 恋愛はあまり重要ではないと思います。他人に振り回されず、自分だけの人生を生きたいという思いが、自分の中のどこかにあります。実は私は「推し」にしかときめきません。このままで十分幸せですが、正直、生身の人間と恋愛しないままでいいのか、不安になることもあります。推しへのときめきは恋愛と呼べるのでしょうか。 推しへの恋愛、非常に興味深いテーマです。問いかけとして面白いので、社会学者になってください(笑)。推しの対象となるアイドルやアーティストは、そもそも相手をときめかせることに全振りしている存在。また架空のキャラクターに恋愛感情を抱く「フィクトロマンティック」も話題ですが、最近の二次元作品はとてもクオリティが高いですよね。無理もない悩みだと思いますし、推しにときめくこと自体は何も問題はないでしょう。 そこに恋愛という要素を取り入れて考えると、見えてくる世界が広がります。「推しにしかときめかない」のは、いわば「寿司といえば大トロ」「肉といえば神戸牛」と言っているようなもの。“非日常的”なものとして恋愛を捉えるならば、ロマンティックなデートや輝かしいプレゼントが該当します。この点で行くと、"ときめき全振り”の推しに勝てる相手は確かになかなかみつけられないと思います。 一方で恋愛には、日常の些細な積み重ねにより、楽しさや親しさが育まれる魅力もあります。そこから考えると、推し活はエンターテインメントの一部に過ぎず、それ以外にも重要なことが恋愛にはあるという価値観もあるかもしれません。自分にとって恋愛は日常的なものか? 非日常的なものか? まずは恋愛における自分の重点を見つめ直すのが良いと思います。 もう少しマクロな視点に立ってみましょう。推し活と非日常的な恋愛、共通するのは消費行動という側面です。メディアやSNSでは、「恋人と行きたいデートスポット!」というように、恋愛と結びつけたコンテクストが、さまざまな切り口から提供されます。どっぷりとそこにハマるのは、マーケティングの渦に飲まれていることでもあります。 さらに、相手を“消費”の対象とする人には注意が必要です。特に近年の日本社会では、性的な目的だけを求めて相手に近づいてくるケース、暴力の被害に発展するケースが目立ちます。根底には性別や権力の非対称性があるのですが、インターネットで簡単に人間関係が生まれるようになったことで、さらに相手の真意が見えにくくなっているのも事実です。 本当に親しい間柄というのは、パワーバランスやお金とは関係のないところで発展します。消費社会から身を守るという点においては、「大トロもかっぱ巻きも、アラカルトで食べる」というような考えも、備えておきたいですね。 教育・総合科学学術院教授 石原 千秋(いしはら・ちあき) 1955年東京都生まれ。1983年成城大学大学院文学研究科博士課程中退。早稲田大学教育学部教授。専門は日本近代文学。現代思想を武器に文学テキストを分析、時代状況ともリンクさせた“読み”を提出し注目される。著書に『学生と読む「三四郎」』(新潮社)、『なぜ「三四郎」は悲恋に終わるのか ――「誤配」で読み解く近代文学』(集英社)、『百年前の私たち――雑書から見る男と女』(講談社)など。演習では恋愛を含む小説を扱い、学生から恋愛相談を受けることも多い。 恋愛は重要だと思います。人を好きになるためには自分を磨く必要もあるし、前提として愛される自分を認めなければならない(=自分を好きである状態)からです。一方で現実の自分は、惚れやすく、すぐに飽きてしまうタイプ。付き合う前から別れる可能性も考えたりします。特に大学というコミュニティーでは「気まずくなるんだったら付き合わなきゃよかった」と感じてしまわないか、恐れてしまいます。遺恨を残さず別れる方法はありますか? まず考えてみたいのが、人間にとって恋愛は、“本能”か“文化”かということです。私の世代は、「気が付けば恋愛をし、好きになっていた」という具合に、たぶん本能に近いところに恋愛がありました。人を好きになるために自分を磨いたり、付き合う前から別れる可能性を考えたりすることはありませんでした。 そのように自然の成りゆきだった恋愛像に、令和を生きる若い皆さんはギャップを感じ始め、一つの「文化」として意識し始めたのだと思います。恋愛を相対化して、社会が公認しているイベントの一つとして自分の外にあるような出来事だと捉えるため、「問題はないか」「ためになるか」「傷つけないか」と考えてしまう。このようにして新しい恋愛の文化が築かれていくのですが、それには20〜30年ほどの時間を要します。今は文化が移行する過渡期にあるため、判断基準があいまいです。皆さんは大変な時期を生きているのです。 文化的な恋愛観は、時代とともに変化します。異性愛に着目してお話しすると、男尊女卑がまかり通っていた江戸時代、上流階級である武士たちは男女交際の方法を失い、“お付き合い”という概念がありませんでした。明治時代になると西洋から生物学が入り、「女性も男性と同じ人類だ」という考えがはじめて(なんと失礼な!)浸透したと考えられます。 そこで男性は女性に関心を抱くわけですが、これまで交際をしていないものだから、女性の心理が分からない。近代文学の始まりといわれる二葉亭四迷の『浮雲』は、官僚をクビになった主人公の内海文三が、お勢という女性を理解できず、振り回される物語です。このように、近代は知識人男性が女性を理解できない時代でした。そこで、恋愛小説や婦人雑誌を読んで、男性が恋愛を必死に勉強し、夢見ていたのです。 恋愛が自然なものになったのは、自由恋愛が流行した昭和後期〜平成期でしょう。ところが最近になって、グローバル化やインターネットの普及 、パンデミックなどの影響を受けながら、再び恋愛文化が変わってきた。性別や階級、地域などによる差別的な文化が排除され、新しい文化をつくっていかなくてはなりません。形式が確立されていないので、自分を基準にするしかないのです。 とはいえ、考え過ぎては前に進みません。「付き合いながら、磨かれていく」くらいの気構えで、どんどん恋愛してみてください。ちなみに、うまくいっている場合も別れた場合も、コミュニティーで気まずくなるのは、恋愛において不可避です(笑)。 親密な恋愛における要素の一つに、他者は知らないような情報の共有があると思います。自分の弱み、恥ずかしさや辛さを感じるような情報です。情報を伝えようとすると自分の生活を整理し、客観視できる好機になるため、恋愛はしたいです。そんな私ですが、魅力的だと思う人が同じ学科の中にいます。片思いの状態で、なかなか話すきっかけができません。「話が回りくどくなってしまったら嫌われるかな?」などと思ってしまいます。考え過ぎでしょうか。 考え過ぎですよ。特に私が引っ掛かったのは、「情報」という言葉です。たしかに、二人だけの秘密を知って、友人同士が親しくなることはあります。しかしそれは、「二人だけの秘密を持てたね」という気持ちの方が重要なはずです。やりとり自体に意味があるわけで、何を共有するか(情報)はあまり関係がありません。 本当に恋愛をし始めたら、自分を客観視している暇はたぶんありません。しょせんは誰もが欠点だらけですから、いずれ恥ずかしい部分は伝わります。「回りくどくなる」のも同様で、「一生懸命話しかけてくれているんだな」と相手に思ってもらえることが大切でしょう。伝えるのは気持ちなので、何をどう話すかは問題ではないんですね。 心の中だけで美しい形を維持できる片思いは、一番すてきな恋愛です。しかしそれは、小説の表紙を眺めながら、「つまらなかったら、どうしよう…」と中身を読まないでいるのと同じ。フィクションでも現実でも、物語は出発してから動き出します。主人公がさまざまな事件に振り回されながら、未来へ進んでいくわけです。私も大失恋の経験があったから、浪人中に失恋の痛手を忘れるために近代文学の作品を読み漁り、文学研究者になっています(笑)。 悩める皆さんに、お勧めの文学作品を紹介しましょう。一つは夏目漱石の『彼岸過迄』。行動力のない内向的な主人公・須永が、純粋な千代子に嫉妬という感情を初めて覚えるのですが、激しく残酷な恋愛像に圧倒されるはずです。嫉妬で燃え上がるのは恋愛の特徴ですが、それがどのような感覚なのかを、物語を通じて知ることができます。 もう一つが、武者小路実篤の『友情』です。野島と大宮という親友同士の二人が、杉子という女性に思いを寄せるのですが、杉子は野島のことを思いっきり嫌っている。それに大宮は気付かずに、杉子に野島を勧めます。そこで(「そこで」と言うべきでしょう)杉子は大宮を手に入れるために、見事に周到な動きをするのですが、この構造が実に面白い。恋愛というのは、いかにとんちんかんなことが起こるのか。それを私たちに教えてくれる作品です。 恋愛や相手をなかなか理解できず、身動きがとれない状態は、近代という時代を生きた日本人の姿そのものです。彼らが悩める読者として読んだ近代文学を片手に、あなたも人生の物語に踏み出してはいかがでしょう。 石原先生おすすめの本はコチラ 夏目漱石『彼岸過迄』(新潮社) 誠実だが行動力のない内向的性格の須永と、純粋な感情を持ち恐れるところなく行動する彼の従妹の千代子。愛しながらも彼女を恐れている須永と、彼の煮えきらなさにいらだち、時には嘲笑しながらも心の底では惹かれている千代子との恋愛問題を主軸に、自意識をもてあます内向的な近代知識人の苦悩を描く。須永に自分自身を重ねた漱石の自己との血みどろの闘いはこれから始まる。(新潮社ウェブサイトより) https://www.shinchosha.co.jp/book/101011/ 武者小路実篤『友情』(新潮社) 脚本家野島と、新進作家の大宮は、厚い友情で結ばれている。野島は大宮のいとこの友人の杉子を熱愛し、大宮に助力を願うが、大宮に心惹かれる杉子は野島の愛を拒否し、パリに去った大宮に愛の手紙を送る。野島は失恋の苦しみに耐え、仕事の上で大宮と決闘しようと誓う――青春時代における友情と恋愛との相克をきめこまかく描き、時代を超えて読みつがれる武者小路文学の代表作。(新潮社ウェブサイトより) https://www.shinchosha.co.jp/book/105701/ イラスト REDFISH 取材・文 相澤 優太(2010年第一文学部卒) 撮影 布川 航太 編集 株式会社KWC デザイン・コーディング 株式会社shiftkey ▼ 記事をシェア シェアする ツイートする 記事をコピー コピーしました 【シン・恋愛論】私たちに恋は必要か? 早大生の悩みに4人のエキスパートが答えます&#13;&#10;https://www.waseda.jp/inst/weekly/features/specialissue-love/ いいね! 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